2010年7月16日金曜日
(2)キャリアチェンジ犬を飼う
私達は、「ピートがやって来た。」と感傷に耽る間もなく、彼をどのような環境で飼い、日常を過ごさせるかを考えねばならなかった。何しろ元盲導犬候補生である。私達が盲導犬協会で一応のレクチャーを受けたとはいえ、このような犬を飼うのは初めてであったし、まったくの手探り状態から出発しなければならなかった。
当初私達は、盲導犬を連れて歩くようなライフスタイルが直ぐにできるものと、その想いを勝手に膨らませていた。たとえ2ヶ月半であったとはいえ、ピートが盲導犬としての訓練を受けていたことや、映画クイールで象徴される大人しく賢い犬というイメージを描いていた。しかしそれは、私達の勝手な思い込みであったことに直ぐに気付かされた。
一番戸惑ったのは、散歩の途中で動かなくなったり、踏み切りで立ち止まったり、挙句の果てに、散歩に行かなくなったことである。
盲導犬協会のOさんから「それはピートの我がままですよ。」との助言を受け、少し工夫をしてでも散歩に引っ張って行くことにした。そして、それは正しい判断でもあった。
ピートがどの段階までの訓練を受けていたかは知らないが、それは盲導犬としての訓練であり、決して家庭犬としての訓練ではなかった筈である。その過程からすれば、ピート自身の経験上、訓練士でもない不慣れな私達が、無理やり散歩に連れ出そうとして嫌がったのも、当然の成り行きであったかも知れない。
この難しかった期間は、ピートにとって、私達にとって、いきなり与えられたお互いの立場を認識するのに必要な時間であったと、今になって思うのである。
盲導犬協会のOさんが言った「ピートの我がまま」という言葉は、ピートを家庭犬として無事に歩ませるには「取りも直さず、あなた方が如何に対応するかに掛かっているのですよ。」 と聞こえてならないのである。
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